第91回『まちむら興し塾』 
 2013年1月22日
   コメンテーター 東洋大学 非常勤講師 村瀬 慶紀 氏 
 テーマ  : 「現代に求められるリーダーシップとは?」
 1.はじめに


   
本発表では、これまでのリーダーシップ研究を振り返りながら、
  現代社会に必要なリーダーシップのあり方について検討する。

 リーダーシップに関する研究は、これまで多くの研究者や実務家
が取り組んできた。


リーダーシップ研究の初期は、
「リーダーシップ資質論」と
「リーダーシップ行動論」に大別された。


   ◎ リーダーシップ資質論
 
       リーダーシップ資質論は、いわゆる優れたリーダーに共通す
    る個人的資質や特性について解明しようとするものである。

   身体的特性:身長、体格、容姿、健康状態等

  精神的特性:内向性、外向性等

  知的特性 :知能、知識、思考力、判断力等、

        その他、適応性、創造力等が研究対象項目となる

   リーダーシップ行動論は、リーダーに必要な行動に焦点を当
  てて、優れたリーダーに共通する行動原則について解明しよう
  とするものである。

    行動論の萌芽的研究(1960年代)には、オハイオ州立大学
  とミシガン大学の研究がある。

   前者は、「仕事」と「人間関係」の両方に配慮することが必
  要である。

   後者は「生産志向性」と「従業員志向性」のうち、「従業員
  志向性」に配慮するリーダーが理想的であると結論づけた。


  ◎ マネジメント・グリッド論(1
  マネジリアル・グリッド理論
 

人間に関する関心

 低
  1.9               9.9
 1                  
 2                  
 3                  
 4                  
 5         5.5        
 6                  
 7                  
 8                  
 9 1.1               9.1
   低       業績に関する関心        高
   

横軸:業績(生産性、収益)に関する関心度

縦軸:人間(従業員)に関する関心度

1.1型:無関心型

9.1型:権威服従型

1.9型:カントリークラブ型

5.5型:組織人間型

9.9型:チーム管理型

  ◎ リーダーシップ帰属理論
      これまでのリーダーシップ研究は、課業(生産性)志向と人
    間関係志向の2次元から検討するものであった。

     リーダーシップを発揮しているかを示す尺度として、業績が
   取り上げられてきたが、研究者の「まなざし」が当時の経営者の
   リーダーシップに集団や組織の好業績を帰属させ、逆に低業績な
   集団や組織は、リーダーシップが人間関係を軽視していることだ
   けに関心を示
しているのではないか、という疑問が生まれた。

  ◎ リーダーシップの条件適合論
     条件適合論とは、集団の置かれた状況や集団が従事する作業の
   内容が変われば、おの
ずとリーダーシップのあり方が変わってく
   る。

    Hersey& Blanchard(1972)は、リーダーシップのあり方を
   決める尺度として、フォロワーの成熟度が重要である、と説明し
   ている。

    成熟度とは、課業遂行(仕事を進めていく際の)意欲と技術
   (能)が関係している。

  
  

  目的:「信じてついて行ってもいいと思えるリーダーに、フォロワ
      ー達が、喜んで自発的
についていこうと思う気持ちを原動
      力にして組織を動かしていくこと。」

  専制的なリーダーシップでは、一時的にフォロワーを統率すること
  はできるが、彼らの才能を引き出したり、長期的な成果は期待でき
  ない。

   ⇒
民主的なリーダーシップが必要。

   ◎ リーダーシップ発現のプロセス
     【第1段階】コミュニケーション

      ・リーダーシップは、コミュニケーションによって生まれる。
       決して、リーダーシップはリーターの自覚のみで発現するも
     のではない。

    ・コミュニケーションは、質的側面、量的側面の両方が存在
     する。

     質的影響:両者のコミュニケーションがどの程度、影響し
          ているのか。

     量的側面:両者間でどのくらいの接点があるか。

     【第2段階】フォロワーの自覚「この人についていこう!」
 
      ・要件:「そのリーダーついて行くに足りる資質がある」と認
         識する。 = リーダーシップ・コア

    ・そのためには、第一段階のコミュニケーション(質的・量的
     側面)、両者間のケミストリー(相性)である。
     個人差の問題が存在する。

    ・リーダーはいかにフォローワーの先入観をなくし、個人差の
     ギャップをいかに解消するか。

     【第3段階】リーダーが具体的に行動をとる

       ・外発的動機づけ:外部からの強制(賃金、昇進)に刺激され
             て行動する。

    ・内発的動機づけ:自らの意思に基づいてリーダーに追従する。
             自己決定権(自分で決めることできる裁量
             権といってもよい)が存在する。

  ◎ リーダーシップ発現のプロセスとその構成ファクター 
      

    【第1段階】コミュニケーション
          上司     働きかけ     部下

    【第2段階】      フォロワーの自覚
             上司     心理変化     部下

    【第3段階】      リーダーの行動
             上司       行動     部下

  ◎ リーダーの役割

      ・リーダーの第一の目的は、「組織の目標、上司としての役割
     を達成させるために、部
下のモチヘーションを上げ、生産性
     を高める」こと。

   ・上司と部下の人間関係は、信頼性、民主的なリーダーシップ
   が重要と言われてきた。

                

    (一方で)叱れない上司、褒め方がわからない上司が増え
     てきている


  【叱れない上司が多い背景】
 
   ・パワーハラスメントに対する関心の高まり

  ・離職者、休職者(うつ病等)の増加

  ・雇用形態の多様化
   ―契約形態(非正規社員、派遣社員等)
   ―専門職採用
   ―成果主義(年上の部下が急増)

   無難に物事をこなすためには、もめ事を起こさない方がベター
   と知覚するリーダーが
急増!
   
   

  【叱り方・褒め方がわからない】

   ・若年層(3040代)のリーダー

  叱れない上司が増えてきている。
   ⇒ 雇用形態の多様化、信頼関係の維持

・高年齢層(5060代)のリーダー
   褒められない上司が増えてきている。
  ⇒ 一元的な指示・命令系統の組織体制、褒め方を知らない。


 身近なテーマだっただけに、

 参加していた学生もアルバイト先での上司の見方。
 自分が、リーダー的存在になっている立場での発言

 社会人から、ダメ上司、の例など、自分たちの経験談などが、次々に飛び
 出し、実感のこもった、発言が相次ぎ、活発な塾となりました。

 
 
 
学生が7人も参加、 久々の参加者もあり、賑やかな勉強会でした。 
   
東洋大学2年生
左から野口さん、山田君、木村君 
東洋大学3年生 1年生
細川君、友枝君、浅山君、宮林さん  
   
  社会人左から、飯田氏、岡野氏、松井氏、伊藤氏、コメーテーター村瀬氏